世界で最初に禁煙運動を始めたのは、ナチスドイツのヒトラーと聞くと意外な感じがします。実はヒトラーは非喫煙者で、国民の健康増進運動の一環でたばこを禁止しました。しかし、それが優生思想に結びついたといわれています。やがて精神病患者の安楽死に始まり、最後はユダヤ人の大虐殺という結果に行き着くのです。さて、内容は違いますが、本年4月我が国では「改定健康増進法」が施行され、受動喫煙に対する規制が厳しくなりました。そして、時同じくして新型コロナが発生しました。

まず、改定健康増進法とは何?

「健康増進法」の一部を改正した「改正健康増進法(受動喫煙防止法)」では、喫煙に関する厳しい法律が施行されました。主な内容は4つで、屋内の原則禁煙、喫煙室設置、喫煙室への標識掲示義務付け、20歳未満の喫煙エリアへの立入禁止です。場合によっては罰則も課せられます。対象となったのは紙巻タバコと加熱式タバコの2種類で、加熱式タバコは「IQOS」、「glo」、「プルーム」等。屋内は原則禁煙とされましたが、事業の内容や経営規模への配慮から喫煙室の設置が認められ、「喫煙専用室」、「加熱式タバコ専用喫煙室」、「喫煙目的室」、「喫煙可能室」の4種類が設けられました。

タバコの規制、一気に過渡期に?

一方で、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生、蔓延。この蔓延は、もともと風当たりが強まっていた喫煙文化を一網打尽に消し去るパワーがあるようにも思えます。喫煙が新型コロナウイルス感染症の重症化に致命的な影響を及ぼすことは、世界中の様々な分析によって真実味を帯び、新型コロナウイルス感染症を重症化させる致命的なメカニズムも明白になってきました。日本国内においてもすでに「改正健康増進法」だけでは収まらないスケールを感じます。

WHOの見解をみてみましょう

WHOは、タバコが原因の死者は世界規模で毎年800万人以上。直接的な喫煙による死者は700万人以上で、間接喫煙の被害を受けた非喫煙者が約120万人と公表しています。新型コロナウイルスによる致死率は、男性が4.7%、女性2.8%と男性のほうが高く、特に中国では喫煙率は男性で約52%、女性は約3%と男性のほうが圧倒的に高いことがわかっており喫煙との関係を指摘されています。

公式ホームページ上では、新型コロナ感染症のQ&Aで「してはいけないこと」の第一に「喫煙」と記述。さらに事務局長談話として「タバコを吸わないでください。喫煙は、あなたがCOVID-19にかかった際に重症化させるリスクがあります」とはっきりしたメッセージを送り「感染した際の重症化リスクを高める」として、禁煙を呼びかけています。

また、WHOが招集した公衆衛生専門家らの研究結果では、喫煙は肺機能を弱らせ、コロナウイルスや他の病気への抵抗をより困難にさせるだけでなく、心臓病、がん、呼吸器系症状や糖尿病などの非感染性疾患を招く大きなリスクの要因になっていることを指摘。これらの病状を抱える人間は新型コロナに感染した場合、重症につながるより大きなリスクにさらされると言及しました。

医学雑誌からも、研究発表が続々と

米医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された論文では、中国の患者1,099人を対象とした大規模調査として集中治療室(ICU)への入室か人工呼吸器による管理、死亡のいずれかの状態に陥るリスクが喫煙者は非喫煙者に比べて3倍も高いというデータが示されました。中国の患者78人を対象に重症化の要因を分析した別の論文では、喫煙歴が最大の重症化要因で、非喫煙者に比べて14倍も重症化しやすいと指摘されています。

英国の医学雑誌『BMJ』 では、医師や研究者が連名で「COVID-19:呼吸器ウイルス流行中の禁煙の役割」というメッセージを出しました。それによると、新型コロナ感染症のウイルスは、主に気道に関する感染症であり、ウイルスは気道や肺から侵入。タバコの煙はウイルス感染をしやすくし、重症化のリスクが上がることから、喫煙者は新型コロナ感染症に感染する危険性が高いと警告。さらに喫煙行動はウイルス感染のリスクを高める手から顔への動きがあることを指摘。

医学雑誌『THE LANCET』の「Oncology」に掲載された「中国における新型コロナ感染症とがん患者の関係についての論文」に対する投稿では、喫煙は新型コロナウイルスが侵入する酵素(ACE2)の発現を著しく増加させると指摘。同時に、「タバコ肺」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が、新型コロナ感染症を重篤化させる独立した因子としました。COPDのほとんどは喫煙によって生じます。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校は、喫煙者に加え、喫煙経験者や電子たばこの利用者も新型コロナの重症につながるリスクが相当に高いとしました。中国、韓国や米国で査読された論文など19本の内容を分析した結果、新型肺炎に感染した場合、重症となった比率は喫煙者が30%で非喫煙者は17.6%だったとしています。

いずれにせよ、WHOや世界中の多くの医師、研究者が指摘するように、喫煙や受動喫煙は呼吸器を痛めつけ、新型コロナ感染症に限らず多くの病気の罹患リスクを高めます。ことに呼吸器感染症に対する免疫機能に悪影響を与えるため重症化リスクが高まる可能性も指摘されています。受動喫煙防止を目的にした改正健康増進法が施行されたばかりですが、新型コロナウイルス対策の側面からも「禁煙」を考えてみる時かも知れません。

日本国内の動きはどうでしょう。

 東京都医師会は、2020年3月12日に記者会見を開き、新型コロナ感染症の感染拡大を防ぐためのお願いとして、以下4項目を公表しました。

・無理せず休んでください。

・新型コロナが心配な方。まず電話で相談を、まず電話です。

喫煙者はこの機会にぜひ禁煙を。

・新型コロナ対策による要介護高齢者等への2次被害を考えてください。 3つ目に禁煙が入っていますが、コロナウイルスとの関連では「喫煙者の方は、重症化率2.2倍死亡率3.2倍との報告があります。4月からは受動喫煙防止条例も全面施行となります。非喫煙者のためではなく、ご自身の身を守るためにもこの機会にぜひ禁煙を考えてください」としています。

加熱式などの新型たばこや受動喫煙について

新型コロナウイルスでは、感染者の呼気から出され、空気中に漂う微粒子(エアロゾル)が感染を広げる可能性が指摘されています。エアロゾルの中では、ウイルスは3時間ほど感染力を維持すると考えられており、エアロゾルを大量に出す加熱式たばこは要注意です。

PMI(フィリップモリス・インターナショナル)は2016年、米国FDA(アメリカ食品医薬品局 Food and Drug Administration)にアイコスから出る物質の資料を提出しました。FDAが策定した有害物質「HPHCs(国際がん研究機関(IARC)やアメリカ合衆国環境保護庁 (EPA)などが発がん性物質と認めた物質など、一定䛾規制機関によって有害物質として認定された 93 種)」は、発がん性など特に悪影響が出ることがわかっている物質に限定されていました。が、PMIはリストにある93物質のうち53物質の結果を報告していなかったのです。改めて調べて判明したことは、この53物質のうち50物質には、呼吸器や粘膜に対して毒性を持つエチルベンゼン、呼吸器や神経への悪影響と発がん性の疑いがあるフラン、急性毒性と発がん性、環境への悪影響のある2,6-ジメチルアニリンが含まれていたのです。

また、「HPHCs」以外の56物質については、従来の紙巻きタバコより多く出ていたそうです。これら56物質には、生体への影響が不明のシクロアルケン類、急性毒性と皮膚刺激性がある無水性リナロールオキシド、皮膚炎や神経障害を引き起こす危険性があるシクロヘキサン、DNA損傷を引き起こすことが疑われる2(5H)フラノン、皮膚や喉など粘膜へ刺激を与え、神経系に影響を及ぼす2-フランメタノールなどが含まれていました。

これらが、気管支や肺に対してどれだけのダメージを与えるか、また、成分そのものについても未知数なのです。新型コロナ罹患の可能性が高まるのは当然ながら、それとは別の「気がつくと怖い」そんなそら恐ろしさを感じせんか。こちらのワクチンは製造不可能でしょうし。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA