たばこの煙は、ガスと粒子に分かれます。ガス成分に主に含まれているのが、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、アンモニア、ニトロソアミン、シアン化水素、硫黄化合物、炭化水素、アルデヒド類、ケトン類など。
粒子成分は水、ニコチンおよびタールからなり、タール中には発がん性のある種々の多環状芳香族炭化水素、フェノール、ベンゼン、ナフタリン、金属イオンなどが含まれています。
この中で特に身体に影響をあたえるものが、一酸化炭素、ニコチン、タールといわれています。
添加物としては、保湿や風味付け、刺激抑制や風味調整の成分などが無数に入っており、米国のたばこ産業から報告されたリストによれば、添加物は約600種。加えて製造工程でも様々な化合物が自然発生します。
例えば、葉たばこ中のニコチンやノルニコチン、アナバシンなどは、発酵過程でニトロソ化を受けて発がん性があるといわれる「ニトロソアミン」を発生させます。
更に加熱することで同様に化学的反応が起こり、結果、健康被害を起こす可能性のある化合物は約4,000種類以上に増えます。
「次世代タバコ」は、人体に害がない?
そこで颯爽と登場したのが、「加熱式」や「電子」といわれる次世代タバコ。
ニコチンやタールを含まないので“人体に害がない”などといわれています。
そのせいか次世代タバコに換えた人も見受けられますが、本当に害が少ないのでしょうか。
大規模かつ長期にわたる臨床結果はどこにも存在せず、健康被害はまだまだ未知数です。
それどころか、製品によっては紙巻きタバコよりも高い濃度のホルムアルデヒドが検出されたり、加熱式タバコに入っているプロピレングリコールにおいては、加熱することで発がん性物質に変質するともいわれ、WHOも健康リスクは否定できないと注意を呼びかけています。
次世代タバコの登場で、米国では10代の電子タバコ使用者が増加し喫煙習慣や違法薬物のゲートウェイになるという指摘もされています。
米国の高校生の約27%がなんらかのタバコ製品に手を出すようになってしまったのです。確かに紙タバコより敷居が低い感じがします。
その一方で、新型タバコによる健康被害も具体的に出始めました。
米国では電子タバコの使用後6人の若者が急性肺疾患などの呼吸器障害を起こして救急入院。
電子タバコの使用に関して警告を発動すると同時に、医療関係者へは、胸の痛みを訴えたり呼吸器に問題が起きている患者には電子タバコの使用を疑うよう要請しました。
日本でもアイコスを吸った後、重篤な呼吸器障害を引き起こし、一時生命の危機に陥った患者の症例報告が出ています。
これはアイコスに含まれる物質が劇症のアレルギー反応と好酸球の活性化を引き起こしたのではないかと考えられています。
アイコスを製造販売しているフィリップ・モリス・インターナショナルは、有害物質の全ての調査結果を意図的に出していませんが、未知の有害物質が多く検出されています。
その中には、アメリカ食品医薬品局(FDA)が策定した発がん性など特に悪影響が出ることが既にわかっている物質や、国際がん研究機関(IARC)やアメリカ合衆国環境保護庁 (EPA)などが発がん性物質と認めた物質も多く含まれます。
例えば、呼吸器や粘膜に対して毒性を持つエチルベンゼン、呼吸器や神経への悪影響と発がん性の疑いがあるフラン、急性毒性と発がん性、環境への悪影響のある2,6-ジメチルアニリンですが、これらは従来の紙巻きタバコよりアイコスから多く出ていました。
これらのなかには一部食品添加物などに使われているものもありますが、細胞への悪影響や腫瘍の発生が確認されている物質も多数あります。
また、これらの物質を、アイコスなどの加熱式タバコで呼吸器から肺の奥深くまで吸い込んだ場合の毒性について詳しいことは何もわかっていません。
さらに問題なのは、タバコ葉の加熱温度によって発生する物質が変化することです。
アイコスなどの加熱式タバコの多くは、タバコ葉を直接加熱するデバイスの有害物質の量は加熱温度を適正にコントロールした状態で測定しています。
有害性低減とするのは、こうしたコントロール下の数値が根拠になっています。
しかし、外気温、使用経過や清掃の頻度、第三者が製造したデバイスの使用といった違いで、タバコ葉を加熱する温度が変化し、そこから発生した物質が有毒性を帯びるリスクについてはノータッチです。
つまり、新型タバコには紙巻きタバコからはあまり検出されない物質が含まれ、肺の奥深くまでこうした物質を吸い込んだ場合、健康にどのような悪影響が出るかわかっていません。
実際、米国や日本では徐々に新型タバコの使用によって重篤な症状が引き起こされると疑われる症例が出始めているのが現実です。
たとえごく少量の有害物質でも、長期の喫煙によって有害物質が少しずつ蓄積し、喫煙者の健康を確実に蝕んでいくのです。